研究課題/領域番号 |
08610056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
中村 光一 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (80237396)
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研究分担者 |
山本 晃 東京工芸大学, 芸術学部, 講師 (80288109)
内藤 明 東京工芸大学, 芸術学部, 講師 (10288110)
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キーワード | フェルメール / カメラ・オブスク-ラ / 遠近法 / 17世紀のオランダ絵画 / 風俗絵画 / 画像情報のデータベース / レンズを通した視覚 / 写真前史 |
研究概要 |
フェルメールの現存作品の2/3にあたる23点を集めた回顧展が1995年11月から翌年6月までワシントン・ナショナルギャラリーとオランダの王立マウリッツハイス絵画館で開催された。これを機にフェルメールの研究書が数多く出版され、その中には本研究に密接に関わる重要な発見を収めたものもあった。代表例が回顧展のカタログに収録された諸論文で、会場となった両館の学芸員とフェルメール研究で著名な学者との共同研究の成果であった。本研究を始めるにあたって、我々はまずこれら論文を詳細に吟味した。特に、回顧展のためにフェルメール作品の修復にあたったマウリッツハイス絵画館のヨルゲン・ワドゥムが執筆した論文『遠近法におけるフェルメール(Vermeer in Perspective)』は、修復作業の過程で発見した新事実を含み、本研究の行く末を左右するほど重要なものであった。その発見とは、作品中に確認されたごく小さな絵の具の欠損部分で、ワドゥムはその穴が遠近法の消失点であると推測した。彼によれば、フェルメールはその消失点のところに針を刺し、チョークをまぶした糸の先端を結びつけ、必要な消失線を画面上に転写していく方法で描いていったらしい。この論文の登場により、フェルメールのカメラ・オブスク-ラ利用説は否定されたとする研究者まで現れた。我々はこの論文を詳細に分析した結果、フェルメールはピントグラス上の画像をキャンバス上に最も効率的に転写するのにこの作図法を利用していたのではないかと結論するにいたった。詳細は次年度にまとめる研究報告で明らかにする予定である。 また、フェルメール作品の画像情報をデータ化することは、当初の計画通り終了しているので、次年度にそのデジタル情報を分析して、カメラ・オブスク-ラ利用説を実証したい。
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