1「美学・芸術学における『形式』概念の多様さ」として、古代ギリシャ以来の思想史にそって歴史的に概観し、「素材-対-形式」から「内容-対-形式」への移行を見た。 2「モーリス・ドニ/ロジャー・フライ/クライヴ・ベル」では、20世紀前半にフォーマリズム批評が形成され、やがてシステム化されてしまう経緯が明らかになった。 3「日本とイギリスの近代美術批評の関係」の章では、主に日本の「白樺派」の美術批評家たちと、イギリスの「ブルームズ・ベリー・グループ」との関わりを検証した。 4「フォーマリズム批評のアメリカでの変容」として、20世紀のアメリカでセザンヌが受容されていく経緯を探り、20世紀後期のC・グリーンバーグのフォーマリズム批評が、H・ホフマンのセザンヌ解釈の影響下で形成されたことを明らかにした。 5「フォーマリズム批評の理論的根拠」として、C・グリーンバーグに焦点を絞り、彼がカントとクローチェの美学、さらにはヴェルフリンの美術史学などを応用したことを論証した。1.で検証した通りグリーンバーグの「形成」概念と、彼が依拠した美学での「形式」の概念に齟齬があることを指摘した。 6最後に「フォーマリズムの終焉?/グリーンバーグ以降の状況から」として、グリーンバーグ流のフォーマリズムから逸脱していく1960年代のアート・シーンを論じた。フォーマリズムの多様性を無視したままでこれに反旗を翻した60年代以降のアート・シーンの迷走、混沌、そして結果的には疲弊して行き場を失いつつあることを指摘した。
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