本研究においては、親近度が低い刺激に対しては負のプライミング効果が縮小することを発見し、実験的に確認した。 負のプライミング効果とは、直前に無視された刺激に対する反応が僅かに遅くなる現象を言う。これは、刺激を無視するために、その刺激に抑制がかかり、その抑制が直後の判断に影響するためであると解釈されている。 本研究においては、負のプライミングが生じない場合に注目し、その原因を説明するための仮説を立てて、それを検証するために実験を行なった。日本人を被験者、アルファベットを刺激として、ディスプレイ上に重ねて提示した2つの文字の中から、あらかじめ指定された色で提示されている文字を選択するという実験を行なったところ、米国における同様の実験では明瞭に観察された負のプライミングが殆ど生じなかった。その原因を探るために、アルファベットだけでなく、カタカナも刺激にした実験を行なったところ、カタカナでは明瞭に負のプライミング効果が生じるのに対し、アルファベットでは、やはり殆ど生じないという結果になった。親近度の低い刺激には負のプライミングが生じにくい、という仮説を立て、これを検証するために、正立したカタカナと倒立したカタカナを刺激とする実験を行なったところ、前者では明瞭な負のプライミングが生じ、後者では殆ど生じないという結果になり、仮説が支持された。
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