実験動物としての歴史が長い、ラット、マウス、モルモットなどの齧歯類は短日に長期間暴露しても、性腺を退化萎縮させることはない。また、体重も短日暴露により、減少したり増加することはない。このように動物が一日の陽の長さに応じて、生理機能や行動を調節する仕組みを光周反応性と呼んでいる。一方で、ハムスター類に代表される齧歯類は、短日暴露により、精巣を萎縮させることがよく知られており、実験動物として使用されながらも、依然として野生の性質を維持している。本研究では、生体の生理機能や行動に重篤な影響を及ぼす光環境と性機能、体発達の関係を、実験心理学的手法を用いて明らかにし、精巣と体重発達を規定する諸要因を分析した。 初年度において、近年実験動物として様々な分野で広く用いられていながら、いまだ短日に対する精巣の応答様式が決定されていないスナネズミの、光応答性を明らかにした。その結果、短日に暴露された動物の精巣は、徐々に萎縮し始め、短日暴露9週で最低となった。その後、短日環境を維持したにも拘らず、精巣は再び大きく成長し始め、12週で短日暴露前の状態に戻り、性機能を回復した。精巣の増大と平行して、体重の増加が観察され、スナネズミは春繁殖種であることが決定された。 平成9年度の課題として、シリアンハムスターの短日暴露による精巣の萎縮が同性あるいは異性との同居により、緩和されるか、を検討した。その結果、同居は短日暴露後の精巣萎縮の程度を緩和させたが、相手性のちがいにより、萎縮の程度が異なることは、無かった。 平成10年度の課題として、短日暴露下の12週間の30%の日にランダムに水を剥奪することによるストレスのため、精巣は規則的剥奪に比べ、大きく萎縮するが、同性との同居がこのストレスを宥和し、精巣萎縮を妨げる、との仮説を検討した。この結果、同居はストレスを宥和し、精巣と体重発達に促進的に働き、萎縮の程度を緩和した。
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