研究概要 |
出生体重1000g未満の超低出生体重(ELBW)児153名(6歳から9歳)と,対照群として兄弟姉妹30名を対象に,心理検査場面における行動をVTRに記録し,単位時間5秒のワンゼロsampling法を用いて,定量的に分析した.WISC-Rと児童評定尺度の結果から,対象児童を42名(27.5%)からなるLD-Suspectedグループ(LD),MR23名とBorderline(71≦IQ≦79)11名の計34名(22.5%)からなるMentally Delayedグループ(MD),発達上問題の見られなかった児童77名(50.3%)からなるTypically Developingグループ(TD)に分類した.WISC-R,Frosting,BG,DAMなど心理検査の成績は,概ねELBW児の方が対照群より有意に低かったが,TDと対照群では差は見られなかった.また,Conners評定尺度によれば,LDとMDには,多くの問題が見られたが,TDには対照群と同様問題は見られず,小さく生まれたこと自体は精神発達や行動面の問題に結びつかないことが示された.行動分析から,行動チェックリストの項目としては,自発語,応答語,頷き,回転椅子による回転・移動,Frostig検査の課題遂行所要時間,検査者への注視平均持続時間が有効であることが示された.例えば,LDはTD,MDに比して,平均注視持続時間が有意に短かく,これは,LDの注意スパンの短さを示す行動指標と考えられた.上記行動指標を用いた判別分析により,TD,LD,MDの分類の正答率は83.3%,50.0%,2.7%となり,平均では72.0%の児童が行動指標のみにより分類可能であることが示された.ELBW児の予後に関してLDの正確な評価と介入は重要な問題であり,本研究では,行動チェックリストを用いた評価によりLD,MDの障害予測がある程度可能であることが示された.データ収集及び分析に科研費で購入したパソコンとソフトを使用した.
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