2年間の研究期間の第1年目の今年度は、老人の聴覚についての基礎的なデータの収集を目指して、音声分析やより効果的な実験方法や刺激の範囲の選定などを調べるための実験を行った。具体的には、以下に示す通りである。 1.ピッチ知覚と時間知覚の統合能力を調べるために、タウ効果(時間知覚がピッチ知覚に影響を与える効果)とカッパ効果(ピッチ知覚が時間知覚に影響を与える効果)の実験を行った。時間範囲の短い条件から長い条件まで様々な範囲にわたる条件を設定して、成人若年者からまずデータを取り、次に高齢者に対して実験を行って結果を比較した。 2.高齢者は語音の明瞭度を高くしないと聞き取り成績が低下するが、その原因について調べるために、まず高齢者に好まれる声と嫌われる声を分類し、それぞれ音声分析を行った。 成人若年者からのデータはほぼ取り終わったが、高齢者については実験の実施に様々な問題を伴う場合があり、今年度は予備実験程度のデータしかとれなかった。 平成9年度は高齢者を対象とした実験を中心にして、結果を成人若年者の場合と比較して、「高齢者にとってどのような声が聞き取りにくいか」「どのような話し方をすれば、聞き取りやすいか」などについて明らかにし、高齢者の音声知覚認知モデルを作成することを目指す。
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