窓を通して画像を部分的に見せる条件で、移動窓で走査するモードと窓を固定して画像の方を動かす固定窓モードとでは、個々の瞬間に見える部分画像は同一であるにも拘わらず異なった印象を与える。これは2種類の視野制限モードでの観察主体と視覚対象との関係が互いに異なるためと考えられる。この仮定の下に両モードでの画像認知の異同の解析を通じて視覚認知行動解明への新しい視点を得ることを目的とする。 今年度は、画像の大きさ次元での相違を検討した。課題は、コンピュータディスプレイ上の直径80ドット(40mm)の窓を通して、縦112ドット(56mm)横160ドット(80mm)の長方形を観察させ、ディスプレイの別の場所に常時呈示されている長方形の縦横の辺の長さをマウスのボタン操作によって増減させることにより、部分呈示された長方形と主観的に同じ形、大きさ、になるように調整する。観察条件は移動窓と固定窓の2条件、長方形は充実図形と輪郭図形の2種類とした。 9名の被験者での実験の結果、移動窓条件では充実図形での等価値は縦横118×116ドット、輪郭図形では120×167ドットであり、数パーセントの拡大傾向が見られた。一方、固定窓条件では、充実図形で105×135ドット、輪郭図形では107×141ドットとなり、縦辺は5-6パーセント、横辺は12-16パーセント縮小した。縦横各辺毎、被験者毎の2種類の観察条件の比較対36例中、固定窓条件での等価値が大きかったのは僅かに1例で、固定窓条件では長方形が移動窓条件に比し小さく評価されることが明らかとなった。長方形の縦横比に関しては移動窓条件ではほとんど変化しなかったが、固定窓条件では縦横の長さが互いに近づく傾向が見られた。 次年度は、もっと複雑な図形、対象の見え方について検討する予定である。
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