同じ画像を窓を通して部分的に観察する時、移動する窓によって走査するWモードと、窓は固定しており背後の画像の方を動かして観察するPモードとでは、個々の瞬間に見える部分画像は同一であるにも関わらず画像の大きさや、画像から受ける印象(顔の表情など)が著しく相違する。この違いをまず、計測しやすい大きさ次元について調べた。前年度はPモードでのみ縮小が見られることを確かめたが、今年度は画像の大きさと窓の大きさとの関係を重点に調べ、また実際に描画させる方法で見えの違いを調べた。(1)長方形の横辺を窓によって能動的に走査し、横辺の見えの長さを、画面右下の長方形の横辺を伸縮させて合わせると、Pモードでは横辺の長さが長いほど、また、窓幅の小さいほど縮小量は大きかった。Wモードでは縮小は見られなかった。(2)マウスによって幾何学図形を自由走査した後再生させると、Pモードで呈示した場合に限り縮小がみられた。(3)大小二つの円の輪郭を、交互に、タブレット上のペンの移動による小円窓で辿った後に描画させると、大円ではPモード呈示の場合にWモードに比し著しく縮小したが、小円では差がみられなかった。 Pモードでは窓より小さい画像(部分)では縮小が起こらないのに対し、窓より大きな画像全体は縮小する。画像の部分と全体とで縮小率が異なるため、画像全体の大きさの印象が部分の総和より小さいため、窓の背後を画像が移動したとき画像の伸縮が見られる。殊に顔の場合には顔全体に対する眼、口などの大きさが相対的に大きくなることが、Wモードとは異なった印象を受ける一因と思われ、画像から受ける印象の相違は、Pモードにおける縮小現象で一部説明可能である。
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