ディスプレイ上に呈示した画像を窓を通して部分的に観察する時、移動する窓によって走査するWモードと、窓は固定しており背後の画像の方を動かして観察するPモードとでは、個々の瞬間に見える部分画像は同一であるにも関わらず画像の大きさや、画像から受ける印象(顔の表情など)が著しく相違する。本研究では、大きさの印象の相違に焦点を当てて調べた。1.長方形の見えの大きさを二つのモードで評価させるとPモードではWモードに比し、10-20パーセント小さく評価された。2.マウスによって幾何学図形を自由走査した後描画再生させると、Pモードで呈示した場合に限り縮小が見られた。3.ディジタイザにより、大小二つの円の輪郭を交互に辿らせた後に描画させた結果を比較すると、Pモード呈示ではWモード呈示に比し大円では著しく縮小した。4.被験者が能動的にポインタを操作するのではなく、長方形の前を窓が往復する(Wモード)、あるいは窓の中を長方形が往復する(Pモード)条件で受動的に観察してもPモードの場合にのみ辺の縮小が見られた。5.長方形の辺の長さが窓幅より小さい、すなわち辺の全体が同時に見える条件ではPモードでも縮小せず、縮小は辺が窓幅を超えた部分 以上の結果より、画像のうち窓の中に収まる大きさの対象についえは見えの大きさは縮小しないので、これら部分画像の見えの大きさの総和は、画像全体の見えの大きさと一致しなくなる。Pモードでは、たとえば、顔全体に対する眼、口などの大きさが相対的に大きくなり、かつ、能動的走査に伴う画像の移動と伸縮が、Wモードとは異なった印象を与える。このように二つのモードでの画像から受ける印象の相違は、Pモードにおける縮小現象で一部説明可能である。
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