1.小学校のエキスパート教師の面接:小学校の勤務経験を有する現職の校長と退職の校長に初任時から現在(あるいは退職)までの経験についての聞き取り調査を行った。彼らの教育技術や教育観の形成に重要な影響を与えたは初任校での同僚や校長であった。書物を通じての影響もあるが、それも同じ学校の同僚や研究グループの教師同士の関わりを通じてということが強かった。このことから、初任時の1年間に焦点を当てて調査することの重要性が改めて確認できた。 2.教育実習の経験の影響:今年度は、教育実習生に対して児童がどのような受けとめ方をしているのか、また、どのような実習生の行動や態度を望ましいと感じているのかを調査した。小学校の児童は概ね教育実習生を好意的に受けとめていて、愛着感を持っていた。このことが実習前の学生の不安をほとんど解消させ、実習を終えた後の充実感をもたらす原因と考えられた。理想とする実習生像では、子どもの気持ちを考えてくれたり、慰めたり、励ましてくれるという情緒的なサポートに関するものと、読みやすい板書やわかりやすい授業などの指導技術に関わる事柄に分けられた。 3.教師の重要な資質:大学生を対象に自分の経験からどのような教師が「よい教師」なのか、自由に記述してもらった。共感的理解、子どもを一人の人間として扱う、ユーモアのセンス、指導技術などに分類された。また、教職準備性と教職観についての質問紙を作成し、大学生に実施した。あわせて、認定講習に来た小学校の教員にも実施した。いずれの集団においても、子どもとの関係に関することがらを小学校の教師にとってもっとも重要な条件としていた。すでに大学生においてethnopedagogicalな知識がacademicな教育の理論や知識よりも重要だと考えていることが分かった。
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