欧米においては、小児への人工内耳の報告がみられるようになってきたが、わが国ではまだ少なく教育的観点からの基礎的実践的研究が必要である。本研究では、重度聴覚障害児に対する人工内耳の適応基準および人工内耳による聴能のための教育指導法を確立することが目的である。 今年度は、イギリスのマンチェスター大学聴覚・言語障害学研究所にて人工内耳装用児のコミュニケーション指導に関する資料を収集した。2歳〜4歳児での術例が多く報告され日本での人工内耳の適応基準を明確にする必要性が認められた。王立マンチェスター聾学校では重度・重複聴覚障害児の音遊びや聴能について現状を観察することができた。イギリスにおける重度・重複障害児の聴覚活用の状況を把握することができ、受動的な聴能訓練ではなく、音遊び積極的に参加していく聴覚活用の実態が観察できた。また、地域での聾学校に対する協力体制が確立していた。 今後、人工内耳は補聴器とは異なる音声情報が入力されるので、新しい視点からの聴能的指導法が求められる。小児であることから発達心理・言語発達等を考慮に入れて指導法を確立する必要がある。
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