(1)小児への人口内耳適応基準 人口内耳は世界各国の成人聴覚障害者に利用されている。現在小児への適応基準については未だ明確な見地はいられていない。一般に適応基準の指標となるのは、聴覚障害の程度である。日本の多くの手術例は110dB以上であったが、イギリスなど欧米では日本と比べて軽い聴覚障害でも適応されている例が多い。また、聴覚障害の程度以外にも失聴の時期が重要となる。言語習得前かまたは言語習得後に失調した中途失聴者に適応されていた理由には、適切なリハビリテーションを行えば良好な聴こえの改善が期待できることにある。しかし、最近欧米では手術時の低年齢化が顕著であり、日本でもこの問題に直面する時期にきているといえる。しかし、小児への人口内耳適応の判断の明確な基準が曖昧となっているのが現状である。 (2)人口内耳装用児の教育および指導 イギリスなど欧米では、人口内耳装用児のためのリハビリテーションや教育現場での指導体制が確立している。しかし成人の訓練プログラムを子供の訓練プログラムに適応させることが難しいといった問題点も指摘されており、人口内耳装用児のための聴能訓練プログラムを完成させる必要がある。日本では、教育環境の改善や指導プログラムの確立が急務であることが認められた。しかし、手術を行う病院の中でも、教育機関との連携がうまく機能し専門化チームが組織されている機関もあり、日本での良いモデルとなっていることが認められた。
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