多くの自閉性障害児の発達診断・相談を行い、すべて8mmで撮影、VHSにコピーし、親に発送した。その中から分析対象を特定した。因子分析等のデータ化については、4画面・2画面追跡録画解析装置で録画した。分析は、コンピューター画像処理等、すべて本装置によった。 1 「おとなの閉性障害児へのかかわり方に関する臨床分析的研究」において、自閉性障害児との相互作用成立水準が高水準を示したおとなの行動傾向の検討と因子分析を行った。その結果、伝達意図を持ちつつ子どもの行動を待ち、適切に反応し、声をかけつつ行動を共有していくことが自閉性障害児に対するおとなのかかわる能力の要点であると考えた。自閉性障害児がかかわるおとなとの「二者間の行動文脈」を読み取る能力を発揮すること、発達段階の上昇に伴って視線が広がっていくこと、集団内での保育者との1対1の関係がコミュニケーション能力を育むこともわかった。 2 「自閉性障害を共に有する二卵性双生児の人とのかかわりと行動特徴に関する臨床分析的研究」において、認知発達と自閉性障害の傾向の交錯が明らかにされた。両児のコミュニケーションに焦点をあてた因子分析による研究から、第2、第3因子に自閉性障害の傾向がでてくるものの、第1因子が「おとなのことばの意味をもった文脈のある使用」で共通していた。自閉性障害固有のコミュニケーションの発達過程とも思われる。両児の1歳7ヵ月から4歳6ヵ月に至る臨床的考察、および3歳10ヵ月から5歳5ヵ月に至る分析的研究から、障害の顕在化と「人」としての成長過程を認めた。 3 「かかわり方のモデル画像」が作成された。本画像を用いて、学会で「発達と障害に視点をあてた発達・教育相談の実際」と題した教育講演を行った。 4 本研究の成果が青年や成人、外国の自閉性障害児・者にも有効なことを、作業所のケース研究会や中国での診断活動を通して確認した。
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