本研究では、発達障害児に焦点をあてた神経心理学的検査を作成することを目的としている。昨年度は、健常児における各検査の年齢別標準値について検討した。本年度は障害児について検討することが目的である。本年度検査を実施した対象児は次の通りである。すなわち、学習障害もしくは学習障害が疑われる者7名(男5名、女2名:6〜12歳)、自閉症もしくは自閉的傾向がある者8名(男5名、女3名:5〜16歳)発達遅滞児4名(男2名、女2名:7〜11歳)、ランド-クレフナ-症候群1名(女、9歳)、注意欠陥多動児1名(男、11歳)、ウイリアムス症候群児1名(男8歳)、の合計22名である。これらの対象児に実施した神経心理的検査(課題)は次の通りである。1.覚醒・注意に関する課題[(1)受容性の選択的注意課題、(2)表出性の選択的注意課題]、2.同時処理と継次処理に関する課題[(1)同時処理課題(1)空間関係(図形模写、記憶による図形の再生)(2)言語関係(ト-クンテスト)(3)類推(レ-ヴン検査)、(2)継次処理課題(1)記憶スパン(数唱、単語の系列再生、K-ABC検査の単語の系列)(2)より高次な継次処理課題(順序発見=視覚性短期記憶課題)]、3.プランニングに関する課題[(1)ウィスコンシンカード分類テスト]。今後は、学習障害、自閉症、発達遅滞の各障害の人数が10名程度になるようにさらに検査を続行し、これらの結果に基づいて、健常児群との比較検討、障害の種類別の検討を行い、障害の個別診断に有効な検査項目を抽出し、発達障害児の神経心理学的検査としての有効性を検討する。
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