本研究では、発達障害児に焦点をあてた神経心理学的検査を作成することを目的としている。一昨年度は、健常児について、昨年度は障害児(自閉症児、学習障害が疑われる児童、知的障害児、その他の発達障害児)について検討した。本年度は次の3点について検討した。1.脳損傷者(前頭葉損傷者)3名に対して神経心理学的検査を実施した。実施した神経心理学的検査(課題)は次の通りである。(1)覚醒・注意に関する課題[1)受容性の選択的注意課題、2)表出性の選択的注意課題]、(2)同時処理と継次処理に関する課題[1)同時処理課題(1)空間関係の課題(図形模写、記憶による図形の再生)(2)言語関係の課題(トークンテスト)(3)類推の課題(レーヴン検査)、2)継次処理課題(1)記憶スパンの課題(数唱、単語の系列再生、K-ABC検査の単語の系列)(2)より高次な継次処理課題(順序発見=視覚性短期記憶課題)]、(3)プランニングに関する課題[1)ウィスコンシンカード分類テスト]。その結果、前頭葉損傷者3名に共通に認められたものは、ウィスコンシンカード分類テストの成績が健常者に比べて有意に低いことであった。2.これまでに得られた障害児のデータを健常児のものと比較検討し、各障害児について個別診断を行った。その結果、知的能力が健常児と同等の者では健常児との間に差は認められなかった。それ以外の者では今後の指導の基礎資料として有益であると思われる神経心理学的特徴が認められた。今後は、知的能力の高い者でもその神経心理学的特徴が抽出できるような検査の開発が必要である。3.これまでに得られた研究成果を報告書としてまとめた。
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