研究概要 |
研究の目的は,地域に資源リサイクルのシステムを導入しようとする環境ボランティアのネットワーキング・プロセスを分析することである.今年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.環境ボランティアによる普及プロセスとの比較研究として,まず最初に行政主導によって資源リサイクルを導入した碧南市の住民に対する社会調査を実施した.資源リサイクル制度は,ごみ減量という共益と,住民への新たな負担をもたらすという私益とが対立する社会的ジレンマ事態である.そのような制度導入を住民が共益と私益の側面からどのように評価しているのかを分析した.住民は,制度導入前の行政による説明会での情報にもとづいて,制度に伴う共益に関する態度を形成し,導入後のコミットメントによって私益の側面の態度を変容するという調査結果が得られた.その成果は,調査報告書「行政主導による資源リサイクルの普及過程」において発表した. 2.地域の中で活動する複数の環境ボランティアのネットワークの機能について,聞き取りの予備調査を実施した.その結果,それぞれのグループ内では「強い紐帯」としての緊密なネットワークが存在し,それが人々を動員する機能を有すること,また,グループ間には「弱い紐帯」としての緩やかなネットワークが存在して,相互に情報を伝達する機能をもっていることが示された.その成果は,『ごみから見える世界』の中の論文「心理学とごみ」(1996)と社会心理学会大会(1996)において発表した. 3.資源リサイクル以外の活動を行っている環境ボランティアへの聞き取り調査も並行して行った.その結果と,前述の成果にもとづいて,現在,環境ボランティアのネットワーキングに関する本調査の準備を行っているところである.
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