研究概要 |
研究の目的は,地域に資源リサイクルのシステムを導入しようとする環境ボランティアのネットワーキング・プロセスを分析することである.今年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.資源リサイクルの普及におよぼす環境ボランティアの機能を明らかにするための社会調査を実施した.その成果は,「心理学研究」(1997)および「社会心理学研究」(1998)において発表した.調査結果の分析により,マスメディアは環境問題への危機感や責任感など環境にやさしくとのマクロな態度の形成に主として影響をおよぼすのにたいし,ボランティアなどのパーソナルメディアはミクロな資源リサイクルの行動意図の形成に影響を及ぼすことが判明した.環境ボランティアによる対面的な働きかけは,地域住民が資源リサイクル行動を実行するうえでの最も大きな影響因であった.さらに,環境ボランティアのネットワーク密度の異なる地域を比較したところ,ボランティア・ネットワークの広がりが大きな地域ほど,資源リサイクルに参加している住民が多いことも判明した.以上の知見から,資源リサイクルの普及におよぼすボランティアネットワークの役割の重要性が確認できた. 2.ボランティアネットワークの構造とその活動がボランティアメンバーの態度や行動に及ぼす影響についても調査を実施した.環境ボランティア・ネットワークには,地域で活動に参加する人々の間の緊密なローカル・ネット(強い紐帯)と,地域をこえて多様な人々とゆるやかなつながりをもつグローバル・ネット(弱い紐帯)の2つのタイプがある.そこで,それぞれのネットワークの機能を比較するために,地域で資源リサイクルを実施するグループのローカル・ネットと,全国規模のネットワークで活動しているエコリーグという2つの対照的な環境ボランティアのネットを対象とした2つの調査を実施した.それぞれのネットワークの構造や,メンバーのネットへの参加動機や帰属意識の違いが,メンバーの活動へのコミットメントに及ぼす効果などを,現在解析中である.
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