研究概要 |
学校における教師の子どもに対する働きかけが,子どもの効力感の発達の基盤をなすものであり,教師自身がどのような効力感をもって教育実践に当たっているか,どのように効力感を形成してきたかを分析することが必要である。そこで本研究では,半構成的な調査事項による質問紙を用いることで,その記述の自己効力感の高さを測定するとともに,その具体的な内容から,自己効力感の特性を明らかにし,併せて,経験年数などの条件との関連や,一般性セルフエフィカシ-尺度得点との対応関係を分析した。対象は,われわれが直接研究指導を行った愛知教育大学心理学教室の卒業生であり,卒業後6年以上の教職歴をもっている教員である。 結果の第1として,小学校のみ,中学校のみ,小・中両方の経験者の3群の中で,小学校のみ経験者の効力感がもっとも高く,中学校のみの教員がもっとも低かった。一般性セルフエフィカシ-は,3群間で差異はなかった。第2に,経験年数の3群(6〜11年,12〜17年,18〜22年)では,経験年数の少ない群が最も効力感は低かった。とくに「わかりやすく授業を展開していく」「子どもの思考や感情を触発し発展させる」「子どもの悩みや困難について,その解決のために支援する」の事項は経験年数12〜17年の群が,他の2群よりも高い効力感を示し,経験年数の増加がそのまま効力感の増大につながらないことが示された。第3に,教師にとって重要と思われる事項は,「つねに研修,研究に励む」「わかりやすく授業を展開」「子どもに積極的に関わっていく」などであり,これらの事項について,中堅の教師たちが必ずしも十分な自己効力感を持つにはいたっていない状況にあることも示された。今後さらに,個別面接を通して,自己効力感として示されてきた中の,教育実践のキーワードとなるべき諸概念について,その具体的な様相を明らかにしていきたい。
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