研究概要 |
第1研究では,38名の現職教師を対象に,基本的に昨年度の面接調査研究を前提にしながら,新たな教師の自己効力感に関する尺度に基づいて,教師のキャリア発達段階の違いによる自己効力感の違いを明らかにし,教師の持つ一般的信念との関連を探ることとした。 教師の自己効力感については「児童生徒の学業への影響で,教師の力はそれほど大きくない」及び「自分が本気で当たれば,非常に難しい児童生徒でも指導できる」について,経験年数の短い教師の方に,自己の影響力についての迷い,自己効力感の低さが見られた。 4つの項目群についての単純合成得点を求め,教師個人についてクラスター分析を行い,特徴的な4群を得た。それら4群の比較では,経験年数の短い第2群が「子どもは放って置かれると,人を当てにしたり他人のせいにしたりする」,「成長のためには子ども自身が勉強や仲間関係の大切さを自覚することが基本だ」なと,子どもの自発性を重視するがやや突き放した見方をしているのが特徴的であった。最も経験年数の長い第4群では,「子どもの仲間関係は,たまたま同じ組になった子どもの性格によって決まってくる」としながらも「子どもはその時々で成長していくものであり,いまの働きかけが,子どもの成長にとって重要である」と,積極的な構えが示された。これらの群の特徴について,さらに面接調査の内容に基づいての分析を行った。 第2研究では,小・中・高校の中堅教員(経験年数11年;それぞれ199,199,123名)について,自己効力感尺度及び自己効力感形成要因についての質問紙調査を行い,特に形成要因について校種間の比較を行ったところ,全校種について先輩,同僚,子どもに恵まれた,という内容が主であった。また特に,自分を児童・生徒の前にさらけ出せるようになったことは,教師の自己意識の変革を表すものとして重要であることが示された。
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