研究概要 |
本研究は,第1部では,教師の自己効力感の特色を半構成的な自由記述式の質問紙調査,効力感に関する評定項目による調査とともに,一部の対象者には面接調査をも実施した。また,新たな教師自己効力感尺度に基づく調査結果も得た。回答記述内容の自己効力感の評定値,あるいは尺度への評定値に基づいて,それぞれ教師の自己効力感の類型を導き,それら類型の教師像の特徴を事例に即して分析を行った。 その結果,自己効力感の水準の違い,特に家庭との連携が重要な要因であることが示されたが,全体的にはそれぞれが独自な実践を工夫し,あるいは研究会などで学んだことを生かしながら実践活動に取り組み,その中で自己効力感を高めつつあることが示された。なお,同じ効力感の水準にあっても,その実践的内実には経験年数による差異が大きいこと,また,一部の教師は校長のリーダーシップのあり方が自己効力感と深く関連していることなどが示された。類型を決定する基準の検討は,今後の課題として残された。 第2部では,中堅教員を対象に,自己効力感尺度及びその形成要因尺度による調査を行った。形成要因については「ひたすら努力を重ねた」ことや「部活動」での生徒との関わりを重視したことで,自己効力感については「児童・生徒の学業に関するいかなる問題にもも対処できるような研修,訓練,経験等を積んでいる」こと等において,小学校や高校よりも中学校教師が高い評定値を示すことが明らかになった。 これまでの研究は,いずれも探索的であり,相互の関連づけも不十分である。今後の分析でさらに検討を深めたい。また,面接調査そのものが教育臨床的な意味を持ちうるかどうかについての検討も保留された。
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