大卒就職者の初期適応に関するデータを収集するために、大学卒業後2年目の男女24人に対して、質問紙と面接による調査を行った。質問紙は、郵送法により、卒業後の進路と職場の状況、職務満足、大学生活と大学時代および卒業後1年目の職業探索行動または初期適応に関する回想、ライフ・プロジェクトの測定を、自由記述を中心に行なった。また、縦断的データを重ねている時間的展望と自我同一性地位の測定、VPI職業興味検査を実施した。面接調査は、予備調査をふまえて、初期適応の実際の行動、その動機と見通しについて明確にするための質問から構成された。また、質問紙調査の結果について、過去のデータを提示し、自己の変容の有無と原因について質問した。面接記録は筆記されると同時に、テープレコーダーで録音され、文章化された。 時間的展望に関する質問紙調査の結果に関して、卒業前3年間と卒業後2年間の合計5年間の平均値の変化を検討してみると、将来展望においてだけ違いが示された。つまり、希望と目標指向性が最終学年において上昇し、それ以降がそれ以前よりも高くなった。しかし、その差はわずかであり、個人差が大きかった。また、自我同一性に関しては、このような違いはみられなかった。 また、面接調査の結果から、過去よりも未来に対して卒業・就職によって変化したと回答した者が多かった。また、質問紙によって示された時間的展望の変化が納得できるとしているものの、その理由については漠然としていた。 以上から、過去よりも将来展望が変化すること、また、実際に社会に出てからではなく、出る直前から再編成されていくことがわかった。
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