研究概要 |
1.実証的研究としては,2回にわたる質問紙調査と1回の学校場面での行動観察を実施し,予備研究資料とともに,縦断的分析を行っており,現在までに以下のことが明らかになった。震災ストレス反応は,震災後1年以上が経過した時点においても見られ,家屋半壊の児童・生徒の方が全壊,一部損壊,被害なしの児童・生徒よりも高かった。また,PTSDを疑われる者は,小学校中学年生に多く,全体として家屋半壊の者にPTSD兆候への該当が多かった。さらに,震災ストレス反応やPTSDに対しては,ソーシャルサポート(特に,母親サポート)と対処自己効力が防御要因となっていたが,消極的対処はむしろPTSDを強めていた。 2.臨床的研究としては,保護者からの訴えや相談から,幼稚園児・小学校低学年生で「一人で入眠,用便,留守番などができないこと」「音や揺れ,地震情報に対する過敏さ」など恐怖反応や親との分離不安が多く挙げられ,小学校高学年生・中学生では同様の恐怖反応のほか,この年齢特有の反応や心理的不安定が挙げられていた。これらのすべてと震災との関連は明確ではないが,被災により子どもの態度や行動への関心は強くなったものと考えられた。このように潜在的にはまだ多くの保護者が心理的援助を求めているものと思われるが,具体的な電話相談は数件にとどまっており,より相談をしやすい体制を工夫することが必要といえる。
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