説得の真の意図を隠蔽し、偽装された説得(第1段階の偽装説得)を行い、その偽装説得を受容した受け手に対して真の説得(第2段階の隠蔽説得)を行うことを二段階説得という。本研究は、この二段階説得事態において警告のもつ説得抑制効果の規定因を解明すると同時に、そうした警告効果の生起機制を解明することを目的とする。 第1研究として、2つの実験を行った。実験1では、偽装説得に先行呈示される事前警告が後続の偽装説得に対してもつ説得抑制効果について、警告要因と遅延要因の影響を検討した。警告要因は、偽装説得に対する単一警告時点から偽装説得および隠蔽説得に対する結合警告の2水準であり、遅延要因は、事前警告時点から偽装説得時点までの時間的な遅延有条件と遅延無条件の2水準であった。実験1から、事前警告は、警告後-説得前および説得中の心理過程に作用し、また送り手やメッセージに対する評価に作用することによって、説得抑制効果をもたらすことを実証した。そして、説得抑制効果は、結合警告条件の方が単一警告条件よりも大きいことを解明したが、遅延要因の影響を明らかにすることはできなかった。実験2では、事前警告のもつ説得抑制効果の生起メカニズムとしての思考に焦点を絞り検討したところ、単一警告に比べて結合警告は、警告後-説得前の位相において否定的思考を増加させることを実証した。 第2研究として2つの実験を行った。実験3では、第1段階の偽装説得に後続提示される警告の説得抑制効果を、実験4では、そうした警告効果の生起メカニズムを検討した。その結果、警告が説得抑制効果を消磁させる傾向のあることは見いだしたが、単一警告(偽装説得に対する事後警告のみ)条件と結合警告(偽装説得に対する事後警告と隠蔽説得に対する事前警告)条件の間の差異については明らかにすることができなかった。
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