本年度実施された2つの研究のうち、研究1では、昨年度の研究同様、成人男女464人を対象にして、本研究代表者によって標準化が完了されているタイプA検査(KG式日常生活質問紙)を用いて特にその構成要素である敵意性格に焦点をあて、抑うつ反応を含めてより状態的なストレス反応を測定するためにここ1週間での気分・感情を多面的にとらえた。そして、ソーシャル・サポートは友人・知人を対象に、期待サポートの他にサポートへの満足度とサポート量を含めて多側面からの測定を実施した。その結果、全般的に敵意性格はストレス反応と正に関連し、ソーシャルサポートは負に関連することが示された。また、敵意とストレスに介在するサポートの効果についても興味深い知見が得られ、敵意とストレスに介在する緩衝効果が一部証明された。 続く研究2では、成人において認められた敵意、サポート、そしてストレスの関連が、発達段階初期の小学児童においても確認されるかどうかを調べた。対象は小学児童4〜6年生の男女405人であり、特性怒り(敵意)尺度、小学生用ソーシャル・サポート短縮版、ストレス反応尺度を実施した。その結果、小学児童においても怒り(敵意)はストレス反応と正に関連し、サポートはストレス反応とほぼ負に関することが示された。また、全般的に怒り(敵意)がさほど高くない場合に限って怒りからストレスへの影響を軽減するサポート効果が確認され、ここでも成人と同様の結果が得られた。 これら2つの研究より、敵意性格が健康へ悪影響を与える可能性とサポートのその悪影響の軽減効果が強く示唆され、ここから、発達段階の比較的初期に、敵意性格の改善あるいは周囲からのサポートを高める教育的介入の必要性が指摘された。
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