本年度(平成8年度)は、2年継続の初年度として、引っ込み思案の幼児(2名)および攻撃的・妨害的な幼児(2名)に対する社会的スキル訓練が実施された。これらの幼児は、それぞれにクラスメート2名ないし3名と一緒に参加する訓練室でのコーチングセッションと自然な保育場面においてトレーナーの援助のもとで実施される訓練セッションの両方に参加した。引っ込み思案の訓練対象者には、社会的働きかけ方、やり取りの仕方などを標的スキルとして選択し、攻撃的・妨害的な訓練対象者には、コミュニケーションスキルと自己コントロールスキルを中心にした社会的スキル訓練がおよそ15セッション(1セッション約60分)試みられた。これらの対象児に実施された社会的キスル訓練は、コーチング法に基づいており、教示、問題場面の提示、モデリング、行動リハ-サル、修正フィードバック、社会的強化から構成された。 本研究において得られた主な結果は、次の通りであった。 (1)引っ込み思案の幼児に顕著であった社会的孤立行動は、訓練終了後に劇的に減少し、合わせて、訓練後には協調的行動の顕著な増加が認められた。 (2)攻撃的・妨害的な幼児では、社会的スキル訓練後に、これらの行動がほとんどみられなくなり、逆に適切な社会的働きかけが増加した。 (3)引っ込み思案幼児の1名と攻撃的・妨害的幼児2名は、社会的スキル訓練以前ではクラスの中で最も低い社会的地位に属していたが、訓練終了後には、クラス内でほぼ平均的な社会的地位へと上昇していた。 これらの結果から、本研究で実施された社会的スキル訓練によって、対象児のクラス内での仲間関係が大幅に改善されることが実証された。現在、この訓練成果がどれくらい維持されるかを明らかにするためにフォローアップ査定中である。
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