平成8年度にほぼ研究をおえていたが、その年に分析が行われていなかった母親役割と父親役割の知覚と養育態度との連関性が検討され。平成9年度では、養育行動の日韓比較を理解するために、比較文化的研究の方法論に対する反省を加えた。他の領域ではあまり問題にならない点を指摘した。その反省の結果を少しでも反映させようとして、動物恐怖に関する日韓比較を行っていたデータをまとめ、大学生を対象にした日韓の類似点と差異を指摘した。それをもっと広い文化に拡張し、動物恐怖に関する3因子(恐怖に関連のない動物、恐怖に関連のある動物、嫌悪をもたらす動物)に分類できることが示された。これは養育行動とは直接結びつかないかもしれないが、比較文化的研究の重要な過程としてあえて報告書に導入した。養育行動に関する質問紙(EMBU)は日本であまり知られていないし、この質問紙に関する問い合わせもあったので、その質問紙の計量心理学的特徴を国際的視点からまとめた説明を加えて、養育行動に関する主研究の理解を補足した。韓国における心理学研究の情報が乏しく、中国人を対象にした研究は多いが、英文で書かれた韓国人の心理学的研究もあまりなく、この欠陥をおぎなうべく比較心理学研究という視点から行われた研究の過程が報告書にまとめられた。
|