からだ全体、姿勢、身体各部位のイメージ、身体接触は人間のあり方の基底を作っていると考えられる。そこで、身体接触、からだの各部位に対する自己評価にどのような特徴が見られるかについて調べる必要がある。そこで、身体接触に対する自己評価と身体各部位の自己評価との関係をみることによって、身体接触、からだの各部位のイメージと意識性におよび感情との関係をさぐることを本研究の目的とした。 平成8年度は、身体接触による意識に及ぼす効果について実験法によりデータを収集した。身体接触するからだの部位と接触してから動かす方向について検討した。接触による意識性に男女差は見られず、接触の方向に差がみられた。 平成9年度は、各種の状況における身体接触の部位の分布、接触の仕方について調査を実施した。たとえば、緊張を鎮めようとする状況、悲しみに耐えようとする状況、怒りを抑えようとする状況など19場面での身体接触の様子を調べた。また、自分の身体イメージ、身体感覚、家族や友人からの過去の接触経験などについても同時に調査し、これらの身体イメージ、身体感覚、過去接触経験と身体接触部位との関連を調査した。これらの検討・分析については、処理中である。 また、気分や意識性の変化を意図して、発声する場合がある。日常生活で、気分を盛り上げようとするときに大きな声を出したり、気分をなだめようとして深呼吸をする代わりに自分に語りかけたりする。また、東洋的修行の場合においても、発声を修行の手段の一部としていることがある。その基礎的実験として、発声の種類変化(あ行、か行、さ行等の50音行や「きゃきゅきょ」、「ぎゃぎゅぎょ」、「ちゃちゅちょ」、「なゃにゅにょ」等)の発声による意識性への影響を検討した。
|