社会的ステレオタイプの原因となる認知的および動機的過程を解明するため、社会心理学的な実験研究を行なった。 実験1は、愛知県内および大阪府内の、それぞれ短期大学に通う学生を対象に行なった。名古屋人・大阪人の各ターゲット集団に典型的な行動と非典型的な行動を多数呈示し、その分布を推測させた。結果は、両地域の被験者において、内集団(自地域)成員よりも外集団(他地域)成員をより均質的に知覚する傾向を示した。また、自地域に対する帰属意識の強い被験者ほど、外集団だけでなく内集団にも均質的でステレオタイプ的な判断を下していた。 実験2では、大学生を対象に、同年代の「同姓」「異性」をそれぞれ内・外集団として、性役割意識に関する意見分布を推定させた。ここでも外集団均質化効果が見られた。さらに、判断対象が内集団成員の時に限り、自己の意見に近い立場の分布を過大評価する、内集団投影型の合意性推測バイアスが見られた。このように実験1・2を通して、分布判断に関する認知過程と集団-自己同一視という動機過程の間の相互作用が示された。 実験3では、男性・女性の各性別集団にとって典型的あるいは非典型的行動を、コンピュータ・ディスプレイ上に呈示し、刺激項目の分布を変化させることによって条件操作を行ない、ステレオタイプ的判断の低減過程を吟味した。当該ターゲット集団の反ステレオタイプ的情報に基づく「直接的反証」だけでなく、比較集団に関する情報による「間接的反証」の可能性があることが示された。また、ステレオタイプの変容における、記憶、印象評定、頻度推定などの異なる判断過程の間の相互関係も示唆された。 この研究は平成9年度への継続課題とし、ステレオタイプ的判断を低減させるための方策を続けて検討する。
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