研究概要 |
本研究は乳癌の告知(インフォームド・コンセント)が、癌患者のパーソナリティにどのような影響を及ぼすかを検討することを目的としている。被験者は、京都警察病院の乳癌外来で初めて受診し、乳癌と診断された24名の女性である(平均年齢45.24歳、21〜78歳)。各患者の初診時、入院時、手術前、手術後、退院時に様々な心理テストと面接を施行し、被験者の癌に対する心理的適応を分析した。 用いた心理テストは、1)気分テスト(POMS)、2)対処スタイル、3)ソーシャルサポート、4)パーソナリティ特性、5)癌に対する心理適応(The mental adjustment to cancer,MAC)、6)ロールシャッハ・テストである。面接では、1)告知に対する理解度、2)家族への対応、3)医者との信頼関係について質問した。 主な結果は次のとおりである。 1)患者の気分は、初診時に比べると退院時には有意に良好となった(ポジティブな気分の増加)。2)上記の傾向は、患者へのソーシャルサポート(配偶者や両親など)が良好な場合にはとくに顕著であった。3)楽観主義の得点の高い患者は、一般にポジティブな気分が高かった。4)ロールシャッハ・テストを告知前に施行した場合と、告知後に施行した場合を比べると、ロールシャッハ反応に興味ある相違がみられた。告知後のロールシャッハ反応では、濃淡(shading)を用いた反応が多くみられ、ある患者は図版の内部(di反応)に癌におかされた乳房を投影している。告知前のロールシャッハ反応では、内藏反応が多くみられ、不安の投影と考えられる。
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