本研究では、認知心理学の領域で使用されている実験の技法をもちいて、ニ言語併用者一人ひとりの認知的側面について、詳細なデータを収集することを目的とした。また、通常のニ言語併用者以外にも、手話と口話を併用するろう者も、調査対象とした。 今年度は、前年度までの文献レビューと調査研究に引き続き、上記の研究目的を達成するために、聾学校や難聴学級、あるいは、いわゆる帰国子女を生徒にもつ国際学校などの協力をえて、実証的な研究をすすめた。 その結果、ニ言語併用者の言語情報処理に関する基本的な問題であるところの、認知発達とニ言語教育の問題、ニ言語使用のドミナンスの問題、ろう者のバイリンガリズムの問題、第二言語習得時にそれを支援する具体的な方策の問題などについて、人間の情報処理と広い意味での教育との関わりなどがある程度明らかにされた。詳しくは、研究成果報告書にまとめられている。 たとえば、ろう者においては、健聴者と情報の符号化の点において、音韻的符号化をするのではなく、手話的符号化をする可能性が大きいことが明らかにされた。また、第二言語が比較的弱い二言語併用者では、絵単語やイラストなどの視覚イメージ情報が言語理解にとっての有効な手がかりを提供することなど、教育的にみても意義のある内容が明らかにされた。 調査結果の詳しい分析については、現在継続中である。
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