集団の中の人間関係において、従来受動的行動として取り扱われてきた同調行動を、本研究は人間が対人関係において、能動的に選択する主体的な行動としてとらえる。そして、長期的な関係の続く集団において、このような、ひく行為がどのように生じるか、また、ひく行為がどう受け取られるかについて、検討する。本年度は、まず、このような能動的ひく行為が、日本特有のものか、あるいは他国でもみられるものかについて、検討した。 被験者277名(イギリス103名、日本174名)による質問調査。結果は、次の通り。 1。複数の意見がでて、まとまらないとき、ひく行為は、イギリスにおいても、日本同様、出現する。 2。ひく行為をどう受け取るか:ひく行為は、協調的、ポジティブ、能動的、快であると認知される。この傾向は、状況の時間的な緊急度が高くなると、さらに高まる。年齢が高くなると、より、ひく行為は、能動的な行為と受け取られる。さらに、ひく行為をすると、長期的にはメリットもあるとの予測も、日本同様、イギリスにおいても、見られた。 このような対人関係方略のメカニズムをしらべるため、来年度は、実験室に小集団を作り、集団心理実験装置を用いて、意見対立の中で人が、あえて自己意見をひく状況についての実験を行う予定である。
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