昨年度に引き続き、15の家庭が縦断研究に参加協力してくれている。 対象児が1歳半及び2歳のときのデータを分析しその結果は1997年7月にアイルランドのダブリン大学で開催された第5回ヨーロッパ心理学会で発表された。そこでは自我の芽生えのときの子どもの情緒的自己表現が家族とのコミュニケーションの中でどのように発揮されているのかを観察データと実験的データで提示した。そして子どもは自分と家族との関係をその後どのように自分の内面に形成しているのかについて考察を行っている。 家庭の情緒的雰囲気や情緒的コミュニケーションの性質及びその結果としての種々の感情の体験が、子どもの自己の形成や世界についての認識形成、そして他者理解にどのような影響を及ぼすのかについて今後も探求していく。 対象児が2歳半のとき、前回と同様に母親にビデオ育児日記の方法でデータ収集をお願いした。このデータは現在分析進行中である。分析の視点は2つある。第一に各家庭のもつ情緒的雰囲気である。情緒的雰囲気とは、各家庭での家族間の感情の出し方(どのような感情をどのように表現するか、例えば怒りを強く出すが、喜びをあまり出さないなど)、各家庭での顕著な感情の種類(例えば不機嫌な様子とか無表情さが多い家庭とか、よく笑い楽しさを表現する家庭など)、さらに各家庭での感情についての評価の違いなどから生み出されてくるものである。分析の視点の第二に家族間の情緒的コミュニケーションがある。それぞれの家庭の情緒的雰囲気の中で家族間でいつ、どのように情緒的コミュニケーションを行っているのかを明らかにしていく。
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