1.全盲学生、弱視で触図使用学生、弱視墨字(印刷文字・図)使用学生に数・量に関する図示課題を与え、レ-ズライタなどで自由に図を描かせた。その結果、全盲の学生のみ他グループと異なる図を描いた。このことは晴眼者と視覚障害者では図の読解に関するリテラシィに差異があることを意味する。これはまた、共通の原図から晴眼者用の教材図と視覚障害者用の触図を作ることの問題を提起している。 2.視覚障害者のための図教材として、一般的にもっとも教材としての質も高く、かつ教育的効果においても晴眼者のための図教材と差がないように配慮された図は大学入試のセンター試験における触図ではないかと考えられる。そこで、大学入試センターの過去9年間と共通一次試験の合計19年間にわたる大学入試問題における図とその触図データベースの構築にとりかかった。ここでは原図から触図への現状での最も権威ある正当的変更法における、実態を知り、これを公式化し言語化することを目的とした。もちろん、センター入試では触図化が不適切と判断され代替問題に変更された問題もある。代替問題を当てざるをえなかった問題の特質を抽出すれば、図の触図化の限界と問題点も明らかになると考え、代替問題も同時にデータベース化している。 データベース構築においてはMacintoshとWindowsその他Unixなど、いずれのOSにも依存しないHTMLによるデータベース構築と将来のインターネットによる提供を検討している。平成8年度はデータベース構築のための画像・テキスト共有型データベースソフトの選択、デジタル・カメラやスキャナなどの画像入力機材の選定、将来のインターネットによる情報提供可能性の検討を中心として、実際の入力作業と分析は9年度行うことになった。 3.項目1に見られるような障害者と健常者の図の読解のリテラシィの差異が発達的にどのように形成されたかを学校教育との関係を探るための調査研究を9年度に盲学校を中心に行い、その形成過程を探る予定である。 4.高等教育のおける使用図の分類とその触図化法則の可能性の検討と触図意外の代替教育手法の検討するために、大学での触図使用の実態と教官・学生が感じている問題点の調査を行い、視覚障害者の高等教育の教科に果たしている図教材の機能のその代替教材の可能性を認知心理学的に探る。
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