1.視覚障害者の図認知のリテラシィを調べるため、種々の数量をどのように弱視者と全盲が図表現するか自由に産出させた。結果、弱視者は晴眼者と全く同じ図表を描くが、全盲者は特徴的図法を使用する場合があることがわかった。盲学校レベルでの触図教育の実態調査の必要性が示唆された。 2.視覚障害を持ち高等教育に学ぶ学生を対象に大学等での触図提供と触図使用の実態を調査した。被験者は点字使用10名、弱視30名であった。触図はたとえ提供されても視覚障害学生にはあまり活用されていないことが明らかになった。このことが教科の高度な専門性などの高等教育特有のものなのか、あるいは大学での教授法の問題なのか、または触図というメディアの限界を示すものなのであるかを確認するため盲学校での触図教育の実態調査を実施する事にした。 3.全国70の盲学校に触図教育に関するアンケートを依頼した(1997年7月)。52校114名の盲学校教諭からの回答を得た。盲学校では触図も個別に指導されている実態が明らかになった。しかし、一方では図は地図や単純な図形に限られ、大学等の教科書に現れる多様かつ複雑な図は用いられていなかった。盲学校のような指導をしても高等教育教材レベルの図を触図にすることにより、その内容を理解させることができるかの問題は残った。 4.高等教育レベルに近い内容の図として、センター入試試験における図資料の視覚障害者への対応を調査した。結果はセンター入試では図・写真に対して触図化のほか言語による説明、削除などの様々な対応が行われていることが分かった。高等教育機関でも図教材を触図化するだけでなく、言語等への代替化を積極的に取り入れる必要性が示唆された。この入試図データについて現在インターネット対応のデータベース化作業を進めている。 5.テキスト理解のための外的資源としての図の特性の認知研究を晴眼・視覚障害者を対象に次年度以降に予定している。現在画像提示と反応分析装置を構築中。
|