研究概要 |
教授心理学研究の立場から、小学校5年生を対象に,算数の「単位量あたり」と「割合」の単元について,複数の指導方法を取り入れた授業を実施し,児童が自主的に学習コースを形成する効果を検討した。 授業実施が,受け入れ校の関係で「自主的に学習コースを形成する」群(実験群)と「通常の授業を展開する」群(統計群)の2群(各23名)による比較とせざるを得なかった。 実験群は,1人の教員で複数の教授法を実施できるように,プリントで選択していく方法を取ったが,それぞれのやり方で学んだことを出し合えるセッションをとり,まとめの段階で再び複数の方法に分かれるようにした。また,学習ストラテジーを考慮した教授法としては,課題を既習の課題と比較したり,自分で問題作りをするなどのメタ認知的なスキルにつながるようなストラテジーを使用することを促す教授法を試みた。 (1)2つの群の比較:実験群の方が統制群よりも学習効果が高いことが予想されたが,むしろ基礎的な事項の理解については統制群の方が成績がよかった。統計的に有意ではなかったが,特に問題作りなどの項目で,実験群の方に,知的能力を利用するような形での効果がもたらされた。 (2)「自主的に学習コースを形成する」群について:指導書に準拠した教え方とまとめ方のみを選択した子どもは,延べ46名中6名にとどまり,自由な選択が保障される教育環境の重要性の一端が示されたと言えよう。しかし,児童自身が教科書のまとめをし応用問題を解くといういわゆる「算数らしさ」に拘泥する傾向も強かった。 今後の研究では,さらに継続的して長期的な効果をとらえる方向とともに,低学年の段階から柔軟な教育環境で自主的選択の効果をとらえる方向をとることも必要であると考えられる。
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