本調査研究の目的は、(1)地域住民(高齢者層)の福祉ニーズが、集落レベルでの地域社会・環境条件や個々の家族の条件によってどのように異なるかを明らかにし、(2)過疎農村における老人の在宅福祉のためにどのような地域福祉が必要か検討すること、また、(3)地域福祉サービスを受けていない一般の地域住民が地域福祉と在宅サービスの在り方としてどのような期待をもっているかを明らかにすること、およびそれらの調査結果を踏まえて、(4)過疎農村の地域社会の存続に必要と思われる地域福祉の在り方を検討することである。 今年度は、沢内村と湯田町(過疎農村)を対象地として、資料収集などの予備調査を行ない、(1)地域社会における住民の生活構造と、(2)地域社会の在宅福祉と地域福祉の実態を把握した。 さらに、(3)社会福祉協議会および集落で実施している高齢者の交流事業(「ふれあい広場」)と、(4)沢内村病院が実施している通院バス事業の事例調査および(5)沢内村長瀬野地区地区における住民福祉意識調査(世帯主層および高齢者層の悉皆調査)を行ない、次のような知見を得た。 (1)農村地区においても、高齢者層は交流機会が少なくなっており、通院バス・病院待合室での語らいが「楽しみ」となっている、(2)心身に不自由がなく介護その他の福祉事業の対象にならない(かつ老人クラブなどに自発的に参加するには限界のある)高齢者層にも福祉的な観点からの事業が重要になっている、(3)そのような事業には地域住民のボランタリーな活動ではカバーできない問題がある、しかし(4)少ない予算でかなり効果的な事業展開の可能性がある。統計的調査については集計中であり、次年度の盛岡市都南地区の調査結果と併せて分析する予定である。
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