今年度の調査により、下記の点が判明した。 1.長野県武石村においては、特別養護老人ホームが1997年4月に開所し、施設介護の充実がはかられた。この建設の経緯そのものが、農村地域社会における地域医療・福祉システムの展開にかんする問題点を浮き彫りにしている。 (1)武石村としては村単独で特別養護老人ホームを運営し、既存の診療所や多目的福祉センターと一体となった運用をすすめることで、地域的な介護のシステムを強化させたい意向であった。しかし、そのことは長野県の指導により見送られ、長門町や和田村と共同で特別養護老人ホームを運営せざるをえなくなった。 (2)施設長には開所時点で38歳という若手の福祉専門職を抜擢した。このことはこの地域の力量をしめしたものとして評価されよう。とりわけ次の点において高く評価しうる。 (1)実績はないが将来を託せる人物として若手を起用したこと。 (2)実施設計段階からこの人物に関与させ、現場の観点から使いやすい施設づくりをめざしたこと。 (3)「普通の生活」というスローガンでノーマライゼーションの理念を現実化したこと。 2.武石村においては、ヴォランティア・グループがデイサービス事業に積極的に関与していることがここでのコミュニティ・ケア・システムにおける特徴の一つとなっている。しかし、この会は、若手のメンバーを迎え入れることができず、この会そのものの高齢化がすすんでいる。
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