1.農村地域社会における地域医療・福祉システムの一般的な存立条件について、次のことが確認できた。 (1)1980年代において、老人医療費の抑制がはかられるとともに、高齢者福祉に対して一定の予算が配分されるようになった。このことが、医療と福祉の連携という課題をより鮮明に浮かびあがらせることになった。 (2)とりわけ医療を中核としてコミュニティ・ケアのシステムづくりをすすめていた地域社会においては、その再編成をせまられることになった。 2.長野権小県郡武石村における事例研究によって、次の点が明らかになった。 (1)武石村においては、医療的なケアをあくまでも下支えとした福祉中心のシステムづくりがなされた。診断所の医師が治療ではなく介護を重視したことが、そうしたシステムづくりをおこなううえでは大きな要因となった。 (2)そうした考え方のもとで、在宅ケアを重視するとともに、武石村診断所と武石村高齢者多目的福祉センターが一体のものとして運営されることとなった。こうした運営方針もまた、武石村におけるシステムづくりをよりよいものとした。 (3)武石村には、地域医療や福祉の実績がほとんどなかった。しかしそのことはこの村にとってはかえってプラスに作用した。まず第一に、高齢者介護という課題をはじめから意識してシステムづくりをすすめることができた。第二に、システムづくりをすすめる過程そのものが、ノーマライゼーションの理念を理解する専門職者の養成につながったし、福祉をごく当然のこととして受け入れる文化的土壌の形成につながった。
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