フレキシブル・スペシャライゼイションの特徴は、柔軟に特化した生産システムのなかで、ニュー・テクノロジーを利用した汎用的な機械装置を、多能工的熟練をもつ労働者が運転し、資源節約的で情報集約的な投入を用いて、細分化した市場向けの多様な製品を産出する、ことだといわれる。 機械、ニット、金属雑貨の各産地の中小企業を対象に調査し、こうした議論がどの程度当てはまるかを検討し、報告書に纏めた。主要な発見は、 (1) ニューテクノロジーの普及度は、機械、ニットの産地で高く、金属雑貨産地で低いこと。 (2) 産地の労働者の熟練度を大企業労働者と比較すると、熟練の広さでは同程度であるが、深さは劣ること。 (3) 産地の製品の多様化は業種に関わりなく進んでいるが、大手中企業では差別化商品少量生産と標準品大量生産を組み合わせているところがあること。 このように、産地の中小企業の機械装置、労働力、製品のフレキシビリティは高いと言える。しかし、それは範囲の経済(または特化の経済)を活用するクラフト生産の復活とはほど遠く、チームワーキングや戦略的ネットワークあるいはインフォーマル労働の活用にみられるように、時間の経済を徹底的に追及するトヨティズム+インフォーマライゼイションの生産システムといえる。わたしはこうした生産システムをフレキシブル・インフォーマライゼイションと呼んだ。
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