阪神大震災後、各自治体は情報伝達体制をめぐっていかなる向上策を用意して住民の需要に応えるか、が本研究の焦点である。その成果は大別して、都道府県別防災準備度、メディア利用計画、生活情報の提供体制、災害弱者への情報伝達体制、住民の行動予想、地域情報ステーションの整備の方針、災害関連組織間関係の7項目に分類することができるが、本研究の核心部分に関する知見は以下のようになる。 1.新規にメディアを活用して生活情報を伝達計画を有する自治体は例外といってよく、既存のメディアを既存の利用形態で伝達する計画が大半である。現状では、今後も災害時の生活情報は深刻な供給不足となるだろう。 2.住民の行動予想としてパニックや流言蜚語を懸念している自治体は都市部になるほど見られ、同時に生活情報を詳細に伝える計画を有している。また、住民の情報照会行動に対応する計画をもつ自治体も少なく、災害弱者に対する情報伝達は社会福祉協議会まかせであり、全体として、住民から行政へ向かう行動に対応できていないことが実証された。 3.「地域情報ステーション」を設置済みとするのは2.5%に過ぎず、それも現有設備で代替する方針が大半であるため、「ステーション」としての機能を果たすことは稀だろう。 4.一方、住民に情報連絡係を担当させる計画を用意している自治体は5割強に達し、災害時に、行政情報を住民に伝えるパイプ役としての期待が高い。しかし、そのための訓練はあまり実施されていない。 結論として、阪神大震災以降、その教訓を生かして向上策が進んだ自治体は例外に属し、全国的にはほとんど見直しが進んでいないことが明らかとなった。
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