今回の助成金の追加配分の連絡があったのは平成8年10月下旬で、調査研究に取りかかれたのは11月中旬からとなったため、調査地点は沖縄県石垣市、神奈川県真鶴町、そして兵庫県三田市となった。これらの市役所や町役場から資料の収集を行うとともに、自治体の取り組みや地域住民の動向について、行政や住民からの聞き取り調査をおこなった。またそれらに基き郵送によるアンケート調査の準備も行った。 新空港建設をめぐる自然環境の保全問題で注目されている石垣市では自然環境についての住民の対応はあるが、ゴミや廃棄物問題、町並みなどの景観についの住民の関心は低い。景観保全の「美の基準」をまちづくり条例に盛り込こみ全国的に注目されている真鶴町では、その条例に対する住民の積極的な対応はあまり見られず、町長を中心とした町行政とアドバイザーの専門家の努力が環境問題への力となっている。10年連続で人口増加率が日本一となった三田市は阪神都市圏のベッドタウンであるが、ニュータウン住民と旧住民との間のコミュニケーションは少なく、両者には都市環境にたいする意識にも相違がある。また新住民は良好な近隣住環境のもとで、地元の三田市より大阪市や神戸市などに対する指向がつよく、市域全体にあたる都市環境問題への関心は低い。 都市環境問題については以下のようなさまざま視角からの検討が必要であることが明らかとなった。具体的には、都市環境問題は大気・騒音・水質の汚染問題、ゴミ・廃棄物処理の問題、自然的環境や社会的歴史的な景観の保全(眺望・町並み・歴史的風景)、生活環境(居住環境など)、社会環境(近隣との交際・プライバシー)など非常に多面的な位相をもっている。また、これらとかかわる社会構造的側面も計画・開発の主体と運動主体、受益層と苦益層、問題の広がりなど多角的な位相をもっている。
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