都市環境問題をめぐる住民の対応についておこなった三つの調査をC.オッフェの社会運動論の枠組[(1)行為の主体、(2)イッシューの特性、(3)運動の価値志向、(4)行為様式]により分析した。 第1に、広島市の安佐北区白木町における不燃性廃棄物埋め立て計画に反対する運動では、(1)は強力な個性を持ったリーダーに率いられた旧村住民の山林所有者を中核とした団体、(2)は大量廃棄の問題を周辺の旧村地域に押し付ける一方で、連合自治会の地域有力者には地域振興の利益誘導型の根回しがなされている。(3)は、命の水源をまもるという根源的価値と、大量生産・消費や大量廃棄に対する問いである。(4)は、一般的に行われる署名や請願、宣伝活動の外に、法的根拠を踏まえた立木トラストが注目される。 第2は、広島市安佐北区の高陽ニュータウンにおけるJRバス営業所建設反対運動であるが、その(1)は、近隣の二つの自治会である。(2)は、郊外住宅地奥の私有地にバスの営業所建設による居住環境の悪化への住民の不満と、市民センターの建設地を確保するために他区のJR営業所の移転代替地を求めている市行政との対立である。(3)は、住環境を守りたいというマイホーム的環境主義と自治会の運営にたいする草の根民主主義である。また(4)は、署名や請願、宣伝、学習会などが取り組まれている。また自治会内の対立を顕在化させないために、特別委員会を作って対応するという工夫が試みられている。 第3に、三田市のニュータウンでは良好な居住環境を維持しながら買い物などの不便を改善するための検討がなされている。(1)は、自治会およびその役員、(2)は、住宅都市整備公団により計画された街のため、居住地内にほとんど商店がなく住民は自動車でショッピングセンターに行かざるを得ず、買い物に不便をきたしている。しかし住宅地内に商店を建設することは土地利用計画からも困難があるし、近くに店のできる住民からは反対がある。(3)としては、都市計画の専門家によるゾーン地区計画制と身近な生活利便性の要求がある。(4)は、専門的な知識をもった自治会役員と行政・公団を巻き込んだ計画案づくりである。
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