今年度は、平成8、9年度に実施した、市民意識調査、離婚者調査、大都市の市民相談窓口調査ならびに離婚者福祉施策調査、ウイミンズ・シェルター調査等各種調査の整理と取りまとめを実施。そのうち市民意識調査については、「市民意識にみる離婚化社会の存在状況」として、またウイミンズ・シェルターについては「夫婦間暴力と離婚-緊急避難施設の役割-」として論文にまとめたが、離婚者調査ならびに大都市の市民相談窓口と離婚者福祉施策調査については、いま少し資料の補完の必要性もあって現在取りまとめを続行中である。 市民意識調査から得られた主要な知見としては、離婚観の大きな変化が現れており、旧来の離婚は悪だとする考え方は、女性を中心に否定されつつある。離婚相談にしても、親、知人・友人を超えて家庭裁判所や弁護士へのアクセスが強まり、私から公への転換が特徴的になっている。また生活、養育、仕事など多くの問題が依然として女性の側に覆いかぶさり、離婚への希求と現実の厳しさの狭間で揺れ動いている。さらに不受理申出制度をはじめとする離婚関連諸制度にかんする認知度はきわめて低く、離婚を求める女性にとって大きな損失となっている。 一方、ウイミンズ・シェルター調査から得られた知見としては、母子寮の緊急避難所としての役割には、施設の数や施設での対応など多くの限界が存在するとともに、民間女性シェルターにしても、その意義と役割はきわめて大きいものの、財源やスタッフ等民間運動団体の限界がみてとれる。男女共同参画社会の実現を目指す動きの中で、改めて諸外国のような公的援助の必要性がクローズアップされる。 なお、離婚問題をアジアとの比較的視野に入れることも将来的課題とし、若干の資料調査も実施している。
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