本研究は、「協議離婚の現状と課題」のテーマのもとに、(1)「離婚にかんする市民意識の現状」、(2)「協議離婚方式の問題点とその対応」、(3)「離婚紛争の処理とサポート・システム」、(4)「DVにもとづく離婚と緊急保護施設の役割」、(5)「ひとり親家庭の生活問題と社会保障」の、5つの問題について理論的実証的考察を行った。 (1)にかんする知見。女性における離婚観の変化が顕著で、たとえば「新たな出発」といった離婚に対するポジティブな考え方の出現、離婚相談も近親者から家裁の窓口へといった、私から公への転換、「5年以上別居」など離婚制度改革に対する大きな支持、最後に、離婚不受理申出制度等離婚関連諸制度にかんする認知度の低さ。(2)では、協議のない離婚の問題性として、財産分与・慰謝料、養育費等の取り決めがなされず、支払いが保障されないこと、不受理申出制度の存在意義は認められるものの、社会的浸透度はきわめて低いこと。(3)では、離婚紛争処理における「市民相談窓口」の役割は小さいこと、また家裁窓口の役割は大きいものの、紛争解決の専門職である弁護士は、報酬が高額であることから、その役割はきわめて小さいこと。(4)では、夫の暴力に苦しんでいる妻が多く存在するとともに、解決の方向として離婚が求められていること、暴力からの避難所として母子寮と民間女性シェルターが存在するが、前者は利用の面で種々の制約があること、後者は施設の数や規模の点でニーズに十分応えきれないこと。(5)では、離別母子家庭の経済、養育、住居の水準は低く、福祉施設も十分ではないこと、父子家庭においても問題は多く、福祉施設も母子家庭に準じたものとして、きわめて乏しいこと。 以上のような協議方式にかかわる諸問題の検討から、協議方式の抜本的改革を含めた離婚制度改革や、ひとり親を支える社会保障制度の充実などが急務となる。
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