カ-ル・ラートゲン(1855-1921)が日本の社会・経済問題に触れている文献を蒐集し、特に彼が学術雑誌以外のメディア(新聞・週刊誌等)に寄稿した論稿を手がかりとして、彼の日本観の特徴づけをおこなった。 たとえば、週刊誌『ナツィオーン』に掲載された「日本人の国民性」という随想(これはベルリンで1904年に刊行されたものなので、ヴェーバーがこれを読んだ可能性がある)において、ラートゲンは、日本への旅行者が日本印象記を書くときには、非常に親切な日本人像とまるで天国のような日本像とを描くか、逆にひどく無愛想な日本人像を描くことになるかのいずれかであり、日本の全体像を描こうという試みは結局のところ失敗に終わると述べている。得体が知れないというイメージと、学問や真理のために奉仕する真摯な意思の持ち主というイメージとが交錯しているのが日本人の特色だとラートゲンは見ており、そのことから、彼は、日本人の全体は決して均質ではなく、その内部にはさまざまな異質性が孕まれていると指摘している。このように、彼の日本理解は勝れて相関主義的に精密である。 本研究の研究者は、こうしたラートゲンの論点を明らかにすることに努め、また近世日本の社会構造(とりわけ日本的封建制)に対する理解を深めることに努め、現在、学会発表のための準備を進めている。
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