研究課題「社会システムの秩序問題に関する理論的・実証的研究」にある通り、本年度は、理論研究と実証分析の2つの側面から研究を行なった。 1.社会システム論と秩序問題につての理論的・学説史的研究:社会学に社会システム論を樹立したパーソンズにおいて、秩序問題がどのように展開されているか、主著『社会的行為の構造』にそくして考察した。その結果パーソンズは当時のアメリカ社会に全幅の信頼をおくあまり、アメリカ社会の現状に肯定的判断を下し、アメリカ社会で実現さるべき規範や究極価値の分析にむかい、アメリカ社会が生み出す権力作用の分析が欠落していることを明らかにした。また戦後日本の社会学にパーソンズがどのように受容されたかについて検討を加えた。 2.秩序問題の実証分析へむけての予備的研究:秩序問題の実証分析を行なう準備作業をとして、社会学のなかで実証研究がどのように位置づけられているか、戦後日本の社会学における実証研究の展開をふりかえりながら考察した。その結果1980年代以降のポストモダン思想の登場によって、従来の実証研究は旗色が悪くなっていることが明らかになった。そこで実証研究を再構築する方法を模索した。 以上2つの研究をふまえて、秩序問題の社会学的説明をどうやって確立するかを研究した。
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