自治体計画は、基本的には国レベルの全国総合開発計画(全総)によりその方向性と内容が規定される一方で、地方では市町村それぞれの地域的特殊性によっても決定されている。80年代以降、地域圏では中核都市と他の地方都市や町村とのあいだで重大な「地域間格差」が発生してきたが、各自治体はその置かれた地域的条件に規定されながらも、さまざまな地域振興や地域活性化の方策を模索し、政策化の努力を行っている。 今年度の研究は、自治体の地域計画とその具体的な表現たる地域政策がどのようなプロセスをもって住民生活に関わっているか、その現実的な展開過程に注目するとともに、住民主体の側にどのようなかたちでその啓発と浸透がなされているかを明らかにするために、住民主体の社会教育・生涯学習活動に焦点を置いた実証的なデータの収集を行った。 地域生活における学習機関として公民館がはたす役割はきわめて重大なものであるが、その多くが「趣味・教養」といった学習内容に特化しており、「地域課題」の学習とはいいがたい。かつて、小川利夫氏により提案された「公民館三階建論」の課題は、現代においてますます重要になってきている。地域政策のフィードバック過程として、住民の学習活動の意義は大きいが、こうした学習ニーズはいまのところ高くはなく、それ以上にこうした課題に応える学習プログラムづくりの貧困が指摘される。生涯学習は、住民自身の自主的自発的な学習活動であるとともに、自治体行政システムの改革を迫るものでもある。こうした観点からの分析が、次年度の中心的な研究課題である。
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