今年度の研究は、昨年に引き続き、自治体の地域計画とその具体的な表現たる地域政策が、どのようなプロセスで市民生活に関わっているか、その現実的な展開課程に注目するとともに、市民主体の側にどのようなかたちで、その啓発と浸透、そしてフィードバックがなされているかを明らかにするために、市民主体の祉会教育・生涯学習活動に焦点を置いた実証的な研究をすすめた。また、今年度からは、市民主体のなかでも、女性に注目し、女性政策と女性の政治主体化過程に関わる研究を行った。この成果は、熊本市の女性行政の分析を行う「女性行政の展開と課題」という論文にまとめた。女性行政が始まって10年、女性の自主的なエンパワーメントを創造する新しい政策課題が問われている。 こうした市民参画の行政過程を検討するとき、重要な先進事例が、埼玉県八潮市が平成6年度から開始した「出前講座」である。同講座は、「市民が主役」になるための戦略的な仕掛けとしてとらえ、行政だけではなく、企業や一般市民も巻き込んで進展している。費用弁償なしに自ら進んで生涯学習ボランティア活動を実践するすがたは「生涯学習のまちづくり」の1つの到達点を示すものであろう。そして、こうした展開を創造する課題は、茨城県総和町の「学びから行動、そして実践へ」という女性のまちづくり活動の活力を引き出す生涯学習行政の検討から、そのプログラム化を考えることができる。生涯学習は、市民自身の自主的、自発的な学習活動であるとともに、地域政策とそれを支えるシステムの改革を迫るものである。こうした観点からの分析が、今年度の研究実績である。
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