地方の活性化の動向は、社会状況、時代の流れとともに変化している。1960年代の高度経済成長期の前半までは、地方にとって過剰人口の解消が、農業の生産力の拡大と並んで、主要な課題であった。70年代の高度経済成長期の後半以降は、一転して、地方は人口の過剰流出となり、高齢者対策とともに、コミュニティ機能の維持が課題となった。80年代には、都市化の急激な進行と平行して、地方の復権が唱えられ、地方の活性化が重要課題とされて今日に至っている。90年以降は、ふるさと創生一億円事業を契機として、ふるさとへの関心が高まり、各地で内発的なまちづくり、地域おこしなどの地域振興活動が活発になっている。各地の活性化の動向は多様であるが、その特徴は以下の諸点に要約されよう。 1.各地域で、自然・文化・歴史・産業・人などの地域資源の創意工夫と積極的な活用による活性化が進行している。 2.地域振興のための諸事業が、各地方自治体を中心に数多く企画され、その多くは政府の補助事業として実施されている。こうした事業では、過疎地域の方が、より熱心に取り組んでいる例が多い。 3.地域振興事業を契機として、住民のふるさとへの関心や意識が高まり、まちづくりに自発的、積極的に参画し行動する住民が増加した。 4.一地域だけの活性化には限界があり、幅広く柔軟な地域間の交流連携が必要で、都市と農村との交流、地方からの情報発信なども活発化している。 5.自然環境問題への高まりや、高齢化に伴う福祉によるまちづくりの動きなどが、都市と地方との交流にも反映している。グリーンツーリズムやエコツーリズム、定年退職後の地方への移住などの動向が、それを示している。 6.地域社会は、住民の日常生活の場としての生きられる共同体と、心のより所としての準拠する共同体との両側面をもっている。この、「場のふるさと」と「心のふるさと」との、分離と有機的統合が今後の重要課題である。
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