本研究は、社会福祉援助が都市や農村といった地域的な特性によってどのような影響を受けるのかを実証的に研究したものである。 得られた知見としては、農村といった地域社会特有の家族や親戚などによる福祉的援助も、今日ではかなり難しくなってきたことである。農村に顕著な大規模家族による高齢者扶養や介護がみられたが、現在では家族規模は変わらないとしても、都市化の進展や女性の社会進出などによって、これまでの扶養の構造が崩れつつあるようだ。このことはこれまでにもある程度は推測されていたが、今回の調査で実証された。また、調査対象地として取り上げたA市のような、都市的な性格と農村的な性格が色濃く残る地域では、福祉的援助のあり方も多様化しており、今後の福祉政策の上でも非常に困難な様子を示している。一方、農村的な性格の強いB村においても公的な福祉政策を求める声(都市的な福祉政策と考えられるが。)がみられ、これまでの家族を中心とした扶養・介護構造の転換が求められている。 今回の研究では、都市化の度合いによって、地域社会を大都市-地方小都市-農村の三つのタイプに大きく分類して、地方小都市の事例として、A市、農村の事例としてB村を取り上げた。今後は、大都市を研究対象として取り上げ、都市化の度合いを基板に据えて、福祉的援助のあり方を考察していく予定である。
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